産後の膝の痛みの治し方：3つの代表的な原因

育児や家事で忙しい産後は、急に膝に違和感を抱き始める方も少なくありません。
本記事では、膝痛の背景や対策、そして医療機関の受診タイミングを詳しく解説していきます。

産後の膝の痛みの治し方：3つの代表的な原因

産後の膝痛は、妊娠・出産を通して大きく変化した身体にさまざまな要素が重なり合うことで生じやすくなります。
ここからは、膝の痛みに関わる3つの代表的な原因を見ていきましょう。

ホルモンバランスの乱れと関節の緩み

出産後しばらくの間は、妊娠期に増加していたリラキシンなどのホルモンが体内に多く残りやすく、靭帯が緩みやすい状態が続きます。
そのため、以前と同じ動作でも膝に大きな負担がかかり、痛みの元となることがあるのです。
さらに授乳や睡眠不足によってホルモンの分泌リズムが乱れると、回復力が低下して痛みが長引く可能性もあります。
生まれたばかりの赤ちゃんの世話は昼夜問わず必要となるため、十分な休息や睡眠時間を確保しづらい点も、ホルモンバランスに影響を及ぼす原因として見逃せません。

育児動作での膝への負担

産後は赤ちゃんを抱っこしたり、おむつ替えや授乳など、膝を曲げ伸ばしする機会が増えます。
とくに抱っこをしながら歩く動作や、立ったり座ったりを繰り返すシーンが多いと、膝に加わる負担は想像以上に大きくなりがちです。
さらに家事も同時進行で行う場合、膝に負担をかけ続けることで筋肉疲労が蓄積し、痛みへとつながるケースが見られます。
階段の昇降や重い物を持ちながらの移動が多い場合は、関節まわりの炎症が進行しやすく、回復に時間を要することもあるため注意が必要です。

筋力低下による膝周辺の不安定さ

妊娠中にお腹が大きくなることで、骨盤や腰、下半身を支える筋肉には大きなストレスがかかります。
その後、出産によって体力が消耗した状態のまま育児に突入すると、身体全体を動かす機会が減り、筋力が徐々に衰えてしまうことがあります。
膝を保護するために重要な大腿四頭筋やハムストリングスの筋力が落ちると、関節が不安定になりやすく、痛みが出やすい条件がそろってしまうのです。
赤ちゃんをあやすために立ちっぱなしで抱っこする場面や、同じ姿勢での授乳が続くと、膝周辺の筋力を十分に使えない時間が多くなります。
結果として、筋肉の衰えと関節への負担が同時進行し、痛みを慢性化させる要因となるケースも珍しくありません。

産後の膝の痛みの治し方：3つのセルフケア

前述した原因を踏まえると、産後の膝痛に対しては複合的な対策が求められます。
ここでは、症状を軽減するために実践しやすいセルフケアを3つに分けてご紹介します。

適度な安静と患部の冷却

強い痛みが生じているときは、まず膝を休ませることが重要です。
産後は何かと忙しく動きまわる場面が多いかもしれませんが、意識的にソファや椅子に腰かける時間を確保し、痛みを助長しないよう心がけてください。
急性期の炎症が疑われるときは、氷や冷却パックで患部を冷やすと腫れや熱感を抑えやすくなります。
ただし、冷やしすぎると血行が滞り、回復に必要な栄養素や酸素が届きにくくなるため、1回あたりの冷却時間は数分から十数分程度を目安に行いましょう。
冷却後はタオルなどで保温し、適切な温度を保つことも併せて大切です。

軽いストレッチや筋力トレーニング

膝痛を緩和するには、痛みを抱えつつも適度に筋力を維持・強化していくことが欠かせません。
出産後は体幹や下半身の筋肉が弱りやすいため、ほんの数分でも軽いスクワットや、椅子に座ったまま太ももの筋肉を意識して伸ばすようなエクササイズを取り入れてみてください。
ストレッチに関しては、太ももの裏側（ハムストリングス）やふくらはぎを重点的にほぐすと、膝関節をスムーズに動かしやすくなります。
育児の合間に小まめに取り組めば、筋力低下を防ぎながら膝への負担を減らし、痛みを予防する効果が期待できます。
ただし、動作中に痛みが悪化するようなら無理をせず、その時点で一旦休むようにしましょう。

サポーターなどの補助器具の活用

膝周辺の靭帯が緩くなっていたり、筋力が低下しているときには、サポーターなどを用いて関節をサポートする方法も検討すべきです。
体重移動の際にしっかりとホールド感を得られると、痛みがやわらぎ、動作のしやすさも向上します。
サポーターのなかには通気性や伸縮性に優れた素材が使われているものも多く、育児中の蒸れやすい環境でも快適に着用できるタイプが存在します。
サイズや固定力は商品によって異なるため、自身の膝の状態や利用シーンを考慮して選ぶと失敗が少ないでしょう。
装着時に痛みが増す、あるいは圧迫感が強すぎる場合は適切なサイズや形状ではない可能性があるため、販売員や医療従事者に相談してみるのも方法です。

産後の膝の痛みの治し方：受診を考える3つのタイミング

セルフケアを続けても改善が見られない場合や、痛みが悪化する兆候があれば、医療機関で診察を受けることが大切です。
次の3つに該当する症状が出ているなら、放置せず受診を検討してみてください。

痛みが長期化して生活に支障が出始めた

産後の膝痛は、早期に対処すれば軽快しやすいこともありますが、原因を見極めずに放置すると慢性化するリスクがあります。
とくに痛みが1カ月以上も続き、抱っこや家事、外出などに支障を来し始めた場合は、専門医による検査と治療方針の提案を受けることをおすすめします。
適切なリハビリテーションや投薬のほか、筋力アップのための指導を受けることで、日常生活を快適にする近道が見つかる可能性が高まります。

膝の腫れや熱感が治まらない

炎症を起こしている状態の膝は、見た目に赤みが差し、熱を持って腫れていることがあります。
このような症状が数日続いても引かない場合、関節内部に負荷がかかりすぎている可能性があり、自己判断のセルフケアだけでは十分に改善しないケースも少なくありません。
エックス線やMRIなどを用いた検査を受ければ、関節や軟骨に異常がないかを詳しく確認できます。
痛みと腫れが長期間続くと、慢性化のリスクも高まるため、専門医の指示を仰いで適切な対応をとることが重要です。

体重をかけると強い痛みが走る

立ち上がるときや歩行時に膝に激痛が走る場合は、軟骨や半月板など構造的な問題が発生しているかもしれません。
産後は体重が増えやすい上、骨盤のゆがみによって膝に負担が集中し、予想外に深刻な痛みを引き起こすことがあります。
歩くのが困難なほどの痛みがあると、日常生活だけでなく育児にも大きな影響を及ぼします。
こうした重度の痛みが続くようなら、自己流のケアに頼りすぎず、専門医の診察を受けて原因を突き止めることが先決です。

まとめ

産後の膝痛は、早めの対処と専門家のアドバイスで改善しやすくなります。
セルフケアを試しても症状が引かないときは、ぜひクリニックへご相談ください。