膝の痛みを引き起こす5つの重要な病気

膝の痛みに悩むと、立ち上がる動作や歩行がつらく感じられがちです。
不安を減らし、早めに対処するために、代表的な膝の病気と予防のポイントをご紹介します。
膝に関連する病気は、その原因や経過によって現れる症状が異なります。
ここでは変形性膝関節症、関節リウマチ、痛風、膝蓋軟骨軟化症、そして化膿性関節炎の特徴について順にご説明します。
この記事の流れ
膝の痛みを引き起こす5つの重要な病気
変形性膝関節症の進行性変化
変形性膝関節症は、膝の軟骨が徐々にすり減って痛みが強くなる進行性の病気です。
初期のうちは立ち上がり時にズキッとした痛みが走ったり、長く歩いた後に膝が重だるく感じたりする程度で済むこともあります。
しかし軟骨がさらに摩耗すると、階段の上り下りが苦痛になり、膝の内側が変形してO脚に近づく場合も少なくありません。
実際には年齢を重ねるほど患者数が増える傾向にあり、特に女性はホルモンバランスの変化などが影響して進行しやすいと考えられています。
悪化すると安静時にも痛みが持続する可能性があるため、生活の質を大きく損なわないよう、早めの診察・治療が大切です。
関節リウマチの炎症性症状
関節リウマチは自己免疫の異常により、関節の滑膜が慢性的に炎症を起こす病気です。
膝だけでなく複数の関節が同時に腫れたり痛んだりする点が特徴で、朝起きてすぐのこわばり感や腫れがしばらく続く場合があります。
リウマチが進むと関節変形が起こり、日常生活の動作が一段と制限されることもあるため、早期に診断を受けてコントロールすることが重要です。
現在は、病気の進行を抑える薬剤やリハビリテーション、適度な運動などによる治療法が充実してきています。
痛みの質が他の病気とは異なり、炎症による赤みや熱感が顕著であることも特徴の一つですので、少しでも疑いを感じるなら早めに専門医の診察を検討しましょう。
痛風による急性発作
痛風はプリン体の代謝異常などによる高尿酸血症が原因で、尿酸の結晶が関節に沈着して急激な痛みを引き起こす病気です。
一般的には足の親指の付け根の激痛が有名ですが、膝にも症状が出るケースが少なくありません。
発作が起こると赤く腫れ、触れるのも避けたいほどの鋭い痛みが突然襲ってくるのが特徴です。
痛風を放置すると症状が再発しやすくなり、慢性化すると結節(トーフ)が膝周辺に形成される場合もあります。
また食事や飲酒の影響を受けやすい病気であり、生活習慣の改善と適切な治療によって尿酸値をコントロールすることが不可欠です。
膝蓋軟骨軟化症の影響
膝蓋軟骨軟化症は、膝のお皿(膝蓋骨)の裏側にある軟骨が柔らかく変性したり、すり減ったりして痛みが生じる状態を指します。
主にスポーツを行う若年層や、膝に負担をかける運動を長期間続けている人に多く見られます。
階段の上り下りや、屈伸動作でお皿周辺にチクチクした痛みや違和感を覚えることが典型的です。
座っていて立ち上がるとき、膝を曲げ伸ばしするタイミングで痛みが顕著になり、患部を触るとグリグリとした音や感触を自覚する場合もあります。
比較的軽症のうちは運動制限とリハビリテーションで改善することが多いものの、放置すると痛みが慢性化しやすいため、早めに対処することが勧められます。
化膿性関節炎の危険性
化膿性関節炎は、細菌などの感染によって関節内に炎症や膿が生じる急性の病態です。
とりわけ激しい痛みと腫れ、熱感、発熱などが起こり、日常生活を送るのが困難になるほど膝が赤く腫れ上がることも珍しくありません。
関節内での感染は軟骨の破壊を急速に進め、場合によっては後遺症を残すリスクが高い点が深刻です。
発症の背景には、外傷や周辺組織の感染が広がった場合などがあり、症状が進行するほど治療に時間がかかる可能性があります。
強い痛みとともに発熱や悪寒を伴うようであれば、一刻も早く医療機関を受診し、抗生物質治療など適切な処置を受けることが必要です。
膝の病気を見分ける3つの特徴的な症状
上記のように膝を痛める原因は多岐にわたりますが、病気ごとに代表的な症状があります。
ここでは痛みの性質や部位、腫れや熱感、さらに関節の可動域変化を確認する上でのポイントをお伝えします。
痛みの性質と部位
鋭い痛みがピンポイントで生じるのか、鈍痛が広範囲にわたって続くのかによって、考えられる病気の種類が異なります。
例えば変形性膝関節症の場合、膝の内側や前面などにじわじわとした痛みが出やすく、動き始めや長時間歩いた後に強く感じる傾向があります。
一方で痛風や化膿性関節炎のように、急激な痛みや熱感を伴う場合は炎症が強く疑われ、早急な治療が必要となるケースが多いです。
朝のこわばり感が特徴的な関節リウマチや、膝のお皿まわりがチクチクと痛みやすい膝蓋軟骨軟化症など、その部位や痛みの出方を観察することで早期発見につながる可能性があります。
腫れと熱感の程度
膝が腫れ上がる場合、その程度や熱感の有無を見極めることも大切です。
変形性膝関節症で水(関節液)が溜まることもあれば、リウマチや化膿性関節炎では炎症が強く進行し、患部が熱を帯びることがあります。
痛風の急性発作においても、膝が赤くはれあがって触れただけでも強い痛みが生じることがあるでしょう。
比較的軽度な炎症は冷却や安静で落ち着くことがありますが、明らかに熱を帯びていて痛みも激しい場合は、医師の診察による確定診断と適切な治療を早急に進める必要があります。
関節可動域の変化
膝の曲げ伸ばしがどの程度スムーズにできるかという点も、病気の種類や進行度を判断する手がかりです。
たとえば変形性膝関節症では、進行とともに膝の伸展が制限されるなど可動域が狭くなることが少なくありません。
リウマチでは腫れと痛みが持続するため、膝を動かすときの負担が大きくなり、自分の意思で曲げ伸ばしが難しくなるケースも見られます。
また膝蓋軟骨軟化症では、完全に曲げた状態から伸ばすときや、階段の降り始めに強い痛みが出て動作が滞ることがあります。
可動域の変化は日常動作に直結するので、少しでも曲げ伸ばしに抵抗感を覚えるときは早めに受診して原因を突き止めると安心です。
膝の病気の予防に重要な3つのポイント
これまでご紹介してきたように、膝の痛みにはさまざまな原因があります。
少しでも膝を健やかに保つために、定期的な健診、適切な生活習慣、そして何よりも早期発見と早期治療が欠かせません。
定期的な健康診断
膝の状態を知るには、定期的な健康診断や人間ドックなどで全身の健康バランスを把握することが有効です。
膝に限った検査だけでなく、血液検査で炎症の度合いや尿酸値を把握することで、リウマチや痛風などのリスクを早めに認識できます。
職場や自治体の健康診断を上手に活用し、必要に応じて整形外科やリウマチ科など専門の検査を受ける機会を設けると良いでしょう。
早い段階で異常を見つけられれば、治療やリハビリの効果も高まりやすく、長く健康的な膝を維持することにつながります。
適切な生活習慣の維持
膝の負担を軽減するには、標準体重を保つことや、無理のない範囲での筋力トレーニングが大切です。
膝周りの筋肉をしっかり鍛えると、膝関節への衝撃をやわらげる効果が期待できます。
また、急に激しい運動をすると膝に大きな負荷がかかり、靭帯や軟骨を痛める恐れがありますので、ストレッチやウォームアップを欠かさないようにしてください。
飲酒量や食生活の乱れも痛風を招くリスクを高めるため、栄養バランスに配慮しながら日常生活を過ごすことが重要です。
適度な運動や体重管理、良質な睡眠といった基本的な習慣を守るだけでも、膝の健康は大きく左右されます。
早期発見・早期治療
どの膝の病気も、初期段階で適切な治療を始めれば、進行を遅らせたり症状の悪化を防いだりできます。
軽い違和感だからと放置しているうちに、軟骨や関節組織が大きく傷んでしまうケースは少なくありません。
リウマチのように早期治療が予後を左右する病気もあれば、化膿性関節炎のように緊急性の高いケースもあります。
痛みの原因がどこにあるのか専門医の正確な判断を仰ぎ、必要に応じて薬物療法や理学療法などを組み合わせてケアを進めることが、膝を守る上で非常に重要です。
まとめ
膝の痛みは原因が多岐にわたるからこそ、適切な診断とケアを早めに始めることが大切です。
当クリニックでは各種検査や治療方針のご提案を行っておりますので、気になる痛みがある方はぜひ早めにご予約ください。