歩くと膝が痛くなる5つの主な原因

 膝の痛みに悩む方は、普段何気なく歩いているだけでも大きな負担を感じることがあります。
自分の状態や原因を正しく理解し、適切な対処を行うことで、快適な歩行を取り戻すきっかけになるでしょう。

膝の痛みにもさまざまな要因があり、進行度合いや症状の現れ方は個人によって異なります。
ここからは主に考えられる五つの原因を順番に挙げ、それぞれが歩行時の痛みにどう影響するのかを見ていきましょう。

歩くと膝が痛くなる5つの主な原因

変形性膝関節症の進行

変形性膝関節症とは、膝関節を保護する軟骨がすり減ることで起こる変性疾患です。
高齢者に多いイメージがありますが、実際には運動量や生活習慣によって若年層でも症状が進むことがあります。
軟骨の摩耗が進むと関節の隙間が狭くなり、骨同士が当たりやすくなるため、日常動作にも鋭い痛みが伴う場合があります。
特に歩行時は膝への負荷が大きいため、変形性膝関節症が進行していると、ほんの少し歩いただけでも違和感や痛みを感じることが増えてきます。
進行を抑えるには、適度な運動による筋力保持や体重コントロールが鍵となりますが、症状の度合いによっては医療機関でのレントゲン検査や専門的な治療が必要です。

半月板損傷の影響

半月板は、膝関節の大腿骨と脛骨の間でクッションの役目を担っています。
スポーツや激しい動きで過度な負荷がかかると、この半月板が傷ついたり断裂したりすることがあります。
半月板が損傷すると関節の動きが滑らかでなくなり、痛みだけでなく膝が引っかかるような感覚を覚えることもあります。
損傷の程度によっては日常の歩行もままならなくなるほど痛みが強くなるケースがあり、完全に断裂していれば早期の手術を検討する場合もあります。
歩いているときに突然ガクッと力が抜けるような不安定感や、歩行中に膝の奥で強い痛みを覚えるときは、半月板の問題が潜んでいる可能性を疑ってみるとよいでしょう。

軟骨の損傷と摩耗

半月板だけでなく、膝周りの軟骨組織全般が傷つくことで生じる痛みも見逃せません。
軟骨は骨と骨が直接こすれ合うのを防ぎ、スムーズな関節運動をサポートしています。
しかし、加齢や過度の負荷によって軟骨表面が剥がれたり摩耗したりすると、滑らかな動作が妨げられ、歩行時にこすれるような痛みを感じやすくなります。
摩耗が進むと関節に炎症が起きやすくなり、腫れや熱感も伴うことがあります。
立ち上がるときや歩き始めの瞬間に特に痛みが鋭く感じられる場合は、軟骨の劣化が関係していることが少なくありません。

靭帯損傷による不安定性

膝には、前十字靭帯や後十字靭帯、内側・外側側副靭帯など複数の靭帯があり、安定性を保つ働きをしています。
これらの靭帯を損傷すると、膝がぐらつくような不安定感が生じるため、歩行中に負荷がかかりすぎて痛みが出たり、階段の昇り降りで恐怖感を覚えたりしやすくなります。
特に前十字靭帯が断裂すると、方向転換や踏み込みの際に膝がねじれ、強い痛みとともに膝が抜けるような感覚に陥ることがあります。
スポーツ外傷だけでなく、日常生活の中でも転倒や突然のひねり動作で靭帯を痛めるリスクはあるため、原因不明の膝の不安定感が続く場合は専門医の診断を受けることが望ましいです。
早期の段階でリハビリや補助具を導入し、周辺筋肉を強化することで症状を軽減しやすくなります。

筋力低下による機能障害

筋力の衰えは、膝の安定性を支える能力を著しく低下させます。
特に大腿四頭筋など太ももの前側の筋肉が弱ると、歩行時に膝関節をしっかり支えられず、結果的に関節への負担が増えて痛みにつながりやすくなるのです。
長期間運動不足だったり加齢によって筋肉量が減ったりすると、関節付近のサポートが十分に行き届かなくなり、膝の痛みが生じるリスクが高まります。
筋肉量の低下は急激に進むこともあり、いつの間にか膝への負担が増していたと気づくケースも少なくありません。
痛みを感じやすくなってから慌てて動き始めるのではなく、早めの段階から適度なトレーニングを継続することが大切です。

膝の痛みによる歩行障害の3つの特徴

膝に痛みを抱えた状態が続くと、歩き方や距離感、さらには日常生活の動作全体に影響を及ぼします。
ここでは、痛みを起点とした歩行障害においてよく見られる三つの特徴を紹介します。

初期の軽い痛み

膝のトラブルが始まったばかりの頃は、歩き始めや立ち上がる瞬間にやや鋭い痛みが走ることが多いです。
短い距離であれば何とか歩けるものの、徐々に「膝が重い」「違和感を覚える」といった初期症状が続くようになります。
痛みが軽度であれば、まだ深刻に考えずに放置してしまいがちですが、そのままの状態で無理を重ねると関節へのダメージが蓄積し、気づけば症状が進行しているというケースも決して珍しくありません。
できるだけ早く原因を特定し、適切なケアを始めることで、後々の慢性化を防ぐことが期待できます。

長距離歩行時の症状悪化

初期段階では短い距離なら支障なく歩けても、少し距離を伸ばすと一気に痛みが増してくる場合があります。
これは膝周辺の筋肉や軟骨が、ある程度の時間負荷に耐えられていても、長時間の歩行や繰り返しの使用で疲労が蓄積し、関節部分の炎症や不安定感が強まるためです。
長い距離を歩く機会が多い人ほど、痛みのコントロールが難しくなり、痛みをかばいながら歩くことで逆に他の部位へ負担がかかることもあります。
こうした負の連鎖に陥ると、歩行すること自体に対して恐怖心が生まれ、ますます活動量を減らしてしまうことが少なくありません。

階段昇降時の違和感

平地を歩くときよりも、階段の昇り降りで膝の痛みを強く感じる方が多く見られます。
階段を昇る際には膝を曲げた状態から体重を支えるため、下りる際には膝を伸ばしたまま衝撃を受け止めるため、それぞれ異なる方向から大きな負荷がかかるのです。
特に下りの動作では踏み出すごとに衝撃が膝に伝わりやすく、変形性膝関節症や半月板の損傷がある方は痛みや不安定感が増大しやすいです。
階段の上り下りに怖さを感じるようになると、日常生活に支障が出やすく、さらに筋力低下を招いて症状を悪化させる要因にもなり得ます。

痛みを和らげる歩き方の3つのポイント

膝の痛みを抱えながらでも、工夫次第で歩行をスムーズにし、関節への負担を軽減することが可能です。
ここでは、痛みを和らげるために意識しておきたい三つのポイントを解説します。

正しい歩行フォーム

姿勢が悪い状態や足の向きが偏った状態で歩くと、膝に余計なねじれが生じてしまい、痛みを強める原因になります。
なるべく背筋を伸ばし、視線を前方に向けて歩く習慣をつけることが大切です。
体の重心がしっかりと足の真上に乗るように意識し、足裏全体で地面をとらえるように踏み出すと、負荷が局所に集中しにくくなります。
膝にトラブルを抱えている方は、専門の理学療法士やトレーナーにフォームを確認してもらい、個人に合った歩行方法やストレッチを指導してもらうと良いでしょう。

適切な補助具の使用

膝への負担が大きいときには、杖や膝サポーターなどの補助具を積極的に活用することが検討されます。
サポーターは関節を固定して無理な動きを抑制し、また杖を使うことで体重の一部を腕に逃がすことができるため、痛みが出やすい方には効果的です。
ただし、使用にあたっては正しいサイズ選びや装着位置が重要で、誤った使い方をすると逆に負担が増す可能性もあります。
自分の症状やライフスタイルに合わせて、医師やリハビリの専門家に相談しながら最適な補助具を選ぶことが、長期的には回復への近道となります。

負担を軽減する工夫

体重管理や太もも周辺の筋肉強化によるサポート力の向上は、膝にかかる負荷を大きく減らすのに役立ちます。
適度なウォーキングや水中運動など、関節にやさしい運動を取り入れることで筋力を維持・強化し、膝の保護機能を高めていくことが望ましいです。
また、クッション性の高い靴を選ぶことや、急勾配の坂道を避けるなどの行動パターンの見直しも痛みを和らげる一助となります。
膝への負担を軽くするためには、日常動作の些細な部分にまで目を向け、無理を避けながら適切なメンテナンスを継続することが大切です。

まとめ

膝の痛みの原因を知り、適切な対策を早めにとることで、歩行時の負担を軽減し日常生活を快適にすることが期待できます。
痛みが続くようであれば、専門医の診察を受けることを検討し、当クリニックへの受診予約をお待ちしております。